セラピストGoGo

Washizu Go(わしず ごう)1990年静岡生まれ。平成25年理学療法士免許取得。ヨガインストラクター。パワーリハビリテーション研究会研修終了。大学との連携で運動プログラムの提供、「運動」と「笑い」で健康寿命を延ばす施設。AOIデイサービスの施設長として勤務。

【オミクロンの次!?】生み出すリスクとは?

「ピークアウト」はいつか?

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オミクロンの感染流行が日本でも広がっています。私の住むニューヨークでは一足先にピークを脱しています。ですが、年末年始のピークの際には、州内だけで1日に8万人以上の感染者を出す事態となりました。ちょうど入院診療にあたっていた私も、その厳しさを、身をもって感じました。

 

パンデミックが始まってから2年。私たち医療者はこれまでの経験により、診療に慣れも出てきた一方、患者さんにとっては初めての経験であることが多く、隔離中の孤独や重い症状からくる辛さをマスク越しに分かち合いました。

 

患者さんが流す涙は、私たち医療者にとっても辛いものです。時には、時間をかけて話を聞いたりもしました。医師の仕事は、治療薬を駆使して病気を治すようなイメージがあるかもしれませんが、時に私たちにできることは話を聞くことだけとなってしまう時もあります。「弱ってしまい自分でバナナも食べられなくなってしまった」と涙を流しながら伝えられ、食事を手助けする日もありました。


日本でも感染者の数字が大きくなり、「何をやっても無駄」という諦めの発想や「ただの風邪」「インフルエンザと同じ」といった発言が目立つようになりました。それはある意味では仕方のない反応なのかもしれません。

 

人は危険な状況や予期せぬ状況に直面した時、精神的な防御反応として「正常性バイアス」が働いてしまうことがよく知られています。例えば、災害などに際して、自分に都合の良いデータのみを拾ってリスクを低く見積もってしまう、というような思考の偏りです。現状のコロナのデータが示すものを「風邪」と捉えてしまうのも、まさに都合の良いデータだけを抽出した結果であるのは明らかです。

 

楽観視できるようなデータの存在

このように、危険な状況に直面した際、「楽観的なシナリオ」を考えることは、心のバランスをとる上で大切な反応なのだとも思います。しかし同時に、判断を誤らせることに繋がる恐れもあります。逆に、悪いシナリオに目を向けることは自分の快適レベルを下げることになり、心地の良いものではありません。両者の可能性を考えておくことが、間違いの少ない判断力を維持する上で重要となるでしょう。

 

未来は、不確定要素によって大きく左右されます。「オミクロンはあと2週間で収束する」というような断定的な物言いは、不確実な未来に対する不安な気持ちを心地よく埋めてくれるかもしれませんが、それこそが正常性バイアスを補強してしまうものにもなりうるでしょう。

 

たしかに、オミクロンに対しては、楽観視させてくれるようなデータが出てきているのも間違いありません。

 

米国CDC(疾病予防管理センター)は、1月21日に3つのオミクロンとブースター接種に関するデータを公表しています。

 

そのうち、一つの研究(参考文献1)では、コロナワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した人での入院予防効果が57%まで低下していたのに対し、ブースター接種後は90%まで回復していたという結果が示されています。また、救急外来への訪問を減らす効果は2回接種後では38%でしたが、ブースター接種後では82%まで回復していました。これらのことから、ブースター接種により、オミクロンに対しても入院を防ぐ効果や症状を軽くする効果が大きく期待できることがわかります。


もう一つはJAMAという医学誌に掲載された研究(参考文献2)です。この研究では、COVIDを発症する確率を3回接種と2回接種とで比較し、発症が66%減少していることを示しています。

 

コロナは「インフルエンザ」のようになる?

また、3つ目の研究(参考文献3)では、ワクチン接種回数による感染リスクの違いについて検討しており、未接種者では、ブースター接種者と比較して感染する確率が5倍高いことが確認されています。

 

良い結果を示しているのは、米国からの研究だけではありません。カタールからの研究(参考文献4)でも、ファイザー、モデルナのmRNAワクチンのブースター接種がCOVID発症を(2回接種と比較して)大きく減らしていることが報告されています(ファイザー:2.9% vs 5.5%、モデルナ:1.9% vs 3.5%)。

 

これらの研究から、ブースター接種は、オミクロンの感染予防に対しても、発症予防に対しても、症状を軽くすることにも、そして重症化予防に対しても働くことが示唆され、私たちの持つワクチンがいまだに様々な形でわたしたちの健康を守ってくれることが確認できます。

 

また、今回のオミクロンでは、ワクチン接種後にブレイクスルー感染するケースが増えていますが、(望ましい形とは言えませんが)それをポジティブに捉えさせてくれるデータもあります。ブレイクスルー感染後に新型コロナに対する免疫がますます高まっている可能性が報告されているのです(参考文献5)。

 

このように、ブースター接種の進行と、感染の広がりの結果として、人々の中には大きく免疫の「壁」が出来上がりつつあります。これは、パンデミック脱出の大きな鍵の一つでしょう。

 

感染流行が広がれば、ウイルスの増幅と変異が進む

これらのデータから予測される最善の道は、このまま人間の免疫の壁が大きく立ち上がり、ウイルスも病毒性を増すことなく、あるいは免疫の壁から逃れることなく、新型コロナウイルスがインフルエンザのような季節性の流行にとどまり、対処可能な病気になる未来でしょう。


一方で、そこには不確定要素があまりにも大きいことも知っておく必要があります。例えば、今回のオミクロンの流行のような大きな感染流行が起こることで、ウイルスが増幅する機会が増え、結果として変異の機会が増えることにつながっています。変異は突拍子もなく起き続けていて、病毒性が増すこともあれば、免疫を回避することにつながることもあります。仮に、病毒性が増し、ワクチンの免疫を全くもって無効にするような変異ウイルスが生じてしまったとしたら、人間にとっては、とても都合の悪い変化です。

 

感染流行に関しては、自分の国が良ければそれでよいということでもありません。自分の国で強固な感染対策が行われ、ワクチンの接種率が著しく上昇し、感染者数や重症者数が著しく低下しても、別の国でワクチンの接種が伸びず、感染者が増えてしまえば、それだけウイルスが変異の機会を増やすことになります。それが結果として、新しい特徴を持った新しい変異を生み、それがまた世界中の脅威になりえます。私たちはこれまで繰り返しそれを経験しましたが、同じことが繰り返される可能性が高いことは容易に予想できるのではないでしょうか。

 

過去には、ウイルスが強くなっていくケースも

ウイルスは、今後も病毒性が低下し続けることを保証してくれません。確かに、ウイルスが人に感染してすぐに重い症状を出してしまうという場合には、病毒性の低下したウイルスが残存していく可能性は高くなります。なぜなら重い症状を出した場合、人と人の間で伝播が起こりにくくなるからです。

 

しかし、残念ながら新型コロナウイルスはその特徴が異なります。このウイルスは、人がまだ症状を出し始める1~2日前から感染伝播していくウイルス(参考文献6)で、重症化する前の段階でこそ感染伝播しやすいウイルスなのです。このため、病毒性が増加しても、感染伝播に不都合はありません。

 

実際に、オリジナルのウイルスよりも後に出現したアルファの感染で重症化しやすい傾向が報告されてきましたし、古典的には、1918年に起こったインフルエンザのパンデミックでも、第1波よりも第2波でより重症化しやすくなっていたことが報告されています。このように、後から病毒性が増しても全く不思議ではないのです。

 

最悪のシナリオを想定してみると、ウイルスの病毒性が増し、人々の免疫もその働きを十分発揮できなくなるような変異ウイルスが誕生してしまったとしたら、楽観的なシナリオは崩れ、ワクチン獲得以前の状況に戻ってしまう可能性も残されているということになります。

 
このように、シナリオは多くの不確定要素によって左右されることになります。人々の行動、免疫、ワクチンの接種率、ウイルスの獲得する新たな変異。これらの要素が動的に影響を及ぼしあって、シナリオを突如として変更させます。

 

「オミクロンの次」を生み出すリスク

しかしポジティブに捉えれば、私たちの手によって、このパンデミックを人類に有利な方向に導くことも可能だということもできます。なぜなら、それらの不確定要素に人類が影響を及ぼし続けているからです。

 

英国オクスフォード大学のKatzourakis教授はNature誌の中で、このように述べています(参考文献7)。

「人類を有利な方向に導くために、多くのことを行うことができる。第一に、私たちは楽観主義を捨てなければならない。第二に、死亡、障害、疾病の起こりうるレベルについて現実的に考えなければならない。目標を甘く設定すれば、循環するウイルスが新たな変異ウイルスを生み出すリスクが増加することを考慮する必要がある。

 

第三に、有効なワクチン、抗ウイルス薬、検査、マスク着用、距離、換気やフィルターによる空気中のウイルスの阻止方法に関する深い理解など、今利用できる強力な武器を世界中で使用しなければならない。第四に、私たちはより広範な変異ウイルスから身を守るワクチン(いわゆるユニバーサルワクチン)に投資しなければならない。」

 

より危険で、より感染伝播のしやすい変異ウイルスの出現を防ぐ最善の方法は、感染の拡大を止めることです。アルファはイギリスで、デルタはインドで、オミクロンはアフリカ南部で最初に発見されましたが、いずれも感染が広がっている場所でした。目先の利益で感染を放置していても、残念ながら歴史は繰り返されるかもしれません。

 

偉大なワクチンが効果を示してくれている間は良いですが、そうでなければ残念ながら逆戻りする未来もありえます。そして、頼みの綱の一つであるワクチンへの信頼が人々の中で下がってしまったりしたら、考えたくもありませんが、状況はさらに悪化することさえありえます。

 

今後の状況がどう転ぶかは、私たちの手にもかかっています。もちろん誰もが楽観的シナリオの未来を歩みたいと思っているはずで、それは著者も同じです。しかし、「パンデミックはもうおしまいだ」と楽観的シナリオを想像しすぎることこそが、それを遠ざけてしまうかもしれません。未来のシナリオは決まっていません。

 
近視眼的な議論にとどまらず、最悪のシナリオも想定しながら、「分かったつもり」にならず未来の不確実性を受け入れる。そうした謙虚な姿勢こそが私たちに求められているのではないでしょうか。

blog.washizugo.com

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