セラピストGoGo

Washizu Go(わしず ごう)1990年静岡生まれ。平成25年理学療法士免許取得。ヨガインストラクター。パワーリハビリテーション研究会研修終了。大学との連携で運動プログラムの提供、「運動」と「笑い」で健康寿命を延ばす施設。AOIデイサービスの施設長として勤務。

【脳活性化】若返りたければ、泳ぎなさい!?

ランニングブームが日本で広まって久しいが、それよりも若返り効果があると科学者のあいだで注目されているのが、水泳だ。

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痩せるだけではない。泳ぐことで記憶力や認知力もアップし、気分も良くなる──水泳が万能の有酸素運動かもしれないことが、近年の研究で明らかになりつつある。

有酸素運動には、加齢による悪影響を予防する効果があることは知られている。だがある研究によれば、水泳には独特の、脳の活性効果があるかもしれないという。

 

定期的に泳ぐことで、記憶・認知機能・免疫反応・気分の面で改善が見られることが報告されているのだ。水泳は、ストレスで受けたダメージを修復し、脳内の新たな神経連絡を作り出すことにも役立っているかもしれない。


だが、とりわけ水泳がなぜ・どのようにしてこうした脳機能向上効果を生むのかは、科学者たちもまだ解明できておらず、研究途上にある。

 

筆者は、脳生理学が専門の神経生物学者だ。フィットネス狂で、かつ母親でもある私は、夏のあいだは地元のプールで何時間も過ごす。子供たちが大喜びで水遊びをしたり泳いだりしているあいだ、親たちは離れたところで日光浴をしている──というのはよくある光景だ。かくいう私も、プールサイドから見守る親の一人だったことは幾度となくある。

 

しかし、水泳には認知機能やメンタルヘルスの面でご利益があると知ったら、子供たちと一緒にプールに飛び込む大人も多くなるかもしれない。

 

脳細胞が再生し、神経連絡が強固に
1960年代までは、「人間の脳内の神経細胞とシナプスの数は限定的で、一度損傷したらその脳細胞は再生しない」というのが科学者たちの常識だった。しかし、この考えは誤りだとされた。人間やほかの動物の成長した個体の脳内で、神経細胞が新たに生まれる「神経組織の発生」を、研究者たちが多く目にするようになったからだ。

 

現在は哺乳類でも魚類でも、有酸素運動が神経組織の発生に寄与し、神経細胞やその損傷を修復するのに重要な役割を果たす傾向があるという明確なエビデンスがある。

 

研究によれば、運動に反応して生じるこうした変化の現れ方の一つに、「脳由来神経栄養因子」と呼ばれる蛋白質の増加に由来するものがある。この蛋白質が刺激する脳神経の可塑性、つまり脳が変わる力は、学習や記憶など認知機能を向上させることがわかっている。


ヒトの研究で、脳内を循環する脳由来神経栄養因子の濃度と、学習や記憶を司る領域である海馬の拡張とのあいだには、強い相関関係があることがわかっている。脳由来神経栄養因子の濃度が上がると、認知反応が鋭敏になり、不安や気分の落ち込みを軽減する助けとなることも示された。対照的に、気分障がいの患者は脳由来神経栄養因子の濃度が低い、と研究者たちは考察している。

 

また、有酸素運動は「神経伝達物質」と呼ばれる特定の化学伝達物質の放出も促進する。この物質の一つがセロトニンで、これが増加すると気持ちの落ち込みや不安が軽減され、気分もあがることがわかっている。

 

さらに、科学者たちは脳由来神経栄養因子の濃度上昇だけでなく、樹状突起スパイン(樹枝状突起、つまり神経細胞の細長い部分)の発達促進を司る遺伝子の変化を見るため、魚類を対象に8週間運動をさせたあと、その対照との比較観察をおこなった。この研究は、脳由来神経栄養因子が神経細胞のスパインの密度を増加させると明らかにし、哺乳類での研究を補完した。

 

スパインの密度の増大は、神経細胞が新たな連結を構築するのに役立ち、ほかの神経細胞により多くの信号を送ることに繋がる。信号の反復によって、連結はより強固になり得るのである。

 

哺乳類において、こうした変化が記憶と気分を改善し、認知機能を促進させるのに役立っていることが示されてきた。

 

水泳の何が特別なの?
水泳の何が良いのかは、研究者たちにもまだわかっていない。とはいえ、徐々にその秘密が明らかになりつつある。

 

長らく、水泳は心臓血管に良いと認められてきた。水泳は主要な筋肉群のすべてを使うので、心臓の働きが激しくならざるを得ず、それゆえ全身の血液循環が増える。それが新たな血管形成に繋がる。さらに血流の増加によって、エンドルフィンが大量に放出される。エンドルフィンは、全身を通じて痛みの軽減に働くホルモンであり、それが急上昇することで、よく運動後に表れる多幸感をもたらすのだ。


水泳が脳にどう影響するのか把握するための研究は、大半がラットを用いたものだ。ラットが良い実験モデルなのは、遺伝的・解剖学的にヒトと似ているからである。

 

あるラットでの研究で示されたのは、水泳が脳内回路を刺激し、それが海馬の炎症を抑制してアポトーシス(細胞死)を阻害する、というものだ。この研究はまた、水泳が神経細胞の生存を後押しし、加齢による認知機能への悪影響を低減するのに役立つことも示した。ヒトにおけるアポトーシスと神経細胞の生存を視覚化する方法はまだないが、科学者たちは似たような認知機能の結果を考察している。

 

興味を惹かれる疑問の一つが、とくに水泳がどう短期・長期記憶を促進するのか、ということだ。その有益な効果がどれくらい長く続くのかを特定するために、研究者たちは週5日、一日60分の水泳の訓練をラットたちにさせ、さらにラットの記憶をテストした。6アームのうち、一つが隠しプラットフォームになっている放射状アーム迷路でラットを泳がせてみたのである。

 

ラットを自由に泳がせ、隠しプラットフォームを見つけさせるという実験を6回おこなった。たった7日間の水泳トレーニングだったが、ラットが日ごとに犯す間違いが減少したという点で、短期・長期記憶共に改善が見られた。この認知機能の向上は、人間の神経精神病に由来する学習・記憶障がいを治す一つの策として水泳を利用する根拠となりうる、と研究者たちは指摘する。

 

ラットでの実験から人間の応用への飛躍はかなり大きいが、ヒトにおける研究でも、年齢を問わず水泳には明らかな認知機能上の有益であるとする結果が出ている。
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たとえば、中高年層の知力に水泳がどう影響するかを観察した研究では、泳ぐ人はそうでない人と比べて、頭の回転の速さと注意力が向上していたという結論が出ている。しかし、この研究は調査対象者が無作為ではなかったので、この研究以前から水泳をしている人たちには優位性があった可能性がある。

 

別の研究では、ヤングアダルト世代を対象に、陸上競技をやる人と水泳をやる人の認知力を比較した。水に浸かること自体で違いは生じないが、20分の適度な強度で平泳ぎをしてもらうと、どちらの集団でも認知機能が向上したことがわかった。

 

子供の頭も良くなるかも
水泳は、子供の学習能力向上にも効果があるようだ。

別の研究グループは最近、身体的活動と子供たちの新たな語彙獲得方法との繋がりに着目した。研究者は6〜12歳の子供たちに、なじみのない物体の名前を教えた。次に、お絵かき(静的活動)、水泳(有酸素活動)、クロスフィットのような運動(無酸素運動)の3つをしてもらい、そのあとで先ほどの言葉をどれだけ正確に覚えているかテストした。

 

すると、お絵かきやクロスフィットのあとよりも、水泳後のほうが正確さにおいてずっと上回っていることが判明した。お絵かきとクロスフィットは同レベルだった。

 

これは、無酸素運動と比べて水泳には認知機能上の利点があることを明確に示している。ただし、ここでは水泳とほかの有酸素運動との比較はされていない。この研究結果は、たとえ短時間でも、水泳には若者の脳の発達に高い有益性があると示しているのだ。


どれくらいの時間や距離が必要なのか、どの泳法がいいのか、どの認知適応と回路が水泳によって活性化するのかといった詳細は、まだ判明していない。しかし、神経科学者たちはその解明にかなり近づいてきている。

 

何百年にもわたって、人々は「若返りの泉」を探し続けてきた。我々にとって可能な一番の近道が、水泳なのかもしれない。

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