セラピストGoGo

Washizu Go(わしず ごう)1990年静岡生まれ。平成25年理学療法士免許取得。ヨガインストラクター。パワーリハビリテーション研究会研修終了。大学との連携で運動プログラムの提供、「運動」と「笑い」で健康寿命を延ばす施設。AOIデイサービスの施設長として勤務。

【五十肩】と思っていたら!?自然には治らない痛み?

肩の痛み?ほっといても治らないかも!?

f:id:washizugo:20210512083344j:plainHさん(48歳、男性)は「夜に寝とっても右肩が痛とて、寝返りも打てないんですわ」として私の外来を受診された。ゴルフが大好きで、週に1回は必ずコースに出て、その腕前はシングルとのことであった。「なんとかクラブは振れるんやけど、最近のスコアはさんざんですねん」と付け加えられた。

 

 まずは肩関節の可動域(動かせる範囲)を確認することから診察を開始したが、なるほど、左肩関節に比べて、右の可動域は著しく制限されていたのである。Hさんには右肩関節のMRI(磁気共鳴画像)撮影の予約をとり、近所の方から教えられたとする“アイロン体操”を中止するように説明した。

 

靭帯による補強が極めて弱い関節
 さて、ひとくちで肩関節とは言っても、肩には5つの関節があるのだ。それぞれの関節は、肩甲骨、上腕骨、鎖骨と呼ばれる3つの骨をつないでいる。肩甲上腕関節(“狭い意味での肩関節”であり、肩甲骨と上腕骨頭との間にある)、 肩(けん)鎖(さ) 関節(肩甲骨の肩峰と鎖骨の間)、胸鎖関節(胸骨と鎖骨の間)、 肩(けん)峰下(ぽうか) 関節(肩甲骨の肩峰の下にあり、第2肩関節とも呼ばれている)、肩甲胸郭関節(肩甲骨と肋骨の間)に分けられる。

 

これら5つから構成されている“広い意味での肩関節”は、体中に存在する多くの関節なかで最大の可動域を有している。しかし、他の関節に比べると 靭帯(じんたい) による補強が極めて弱いので、その代りを筋肉が補強している、という特徴を持っているのだ。

 

 したがって、加齢による劣化やケガ、長年の使い過ぎなどによって、容易に関節周囲に痛みを生じる。これらのうちで原因が明らかでないものは「五十肩」として広く知られているが、その他にも「 腱板(けんばん) 断裂」、「インピンジメント症候群」、「石灰沈着性腱板炎」なども多く発生している。これらでは五十肩とは異なって、画像診断などで明らかな異常があり、近所のおばちゃんが言うように「ほっとけば治るで」とはならないのだ。

 

腱板断裂…動かそうとした「瞬間」に痛み
 上腕骨頭を前、上、後方から覆っている4つの筋肉(肩甲下筋、 棘(きょく) 上筋、棘下筋、 小円(しょうえん) 筋)の腱は合体して1つの腱になるが、この部分を「腱板」と呼ぶ。4つの筋肉は基本的には肩を回旋させる役割を担っているが、運動時に磨耗、損傷を受けやすく、断裂に至るのである。

 

なお、この場合の痛みは、断裂そのものではなく、二次的に生じる「肩峰下 滑(かつ)液(えき)包炎(ほうえん) 」(関節を包んで粘り気のある液を分泌している袋の炎症)によるものであり、腕を動かそうとした瞬間や、夜間に患部の側を下にして寝ている時に痛みが強くなる。断裂したところが硬くなると、「コクッ」とした音が鳴る。MRIや超音波が診断に有用だ。

 

 ペインクリニックでは、鎮痛薬の処方に加えて、関節内へのヒアルロン酸ナトリウムや局所麻酔薬の注入、肩甲上神経ブロックなどの治療を行っている。しかし、若く、よく動き回られる方で、筋力低下が起こっている場合には完全断裂となっていることがあり、整形外科での鏡視下縫合術(関節鏡を用いた手術)を選択すべきである。

 

 Hさんは、MRIで腱板に部分断裂があることが判明した。週1回の関節内注入と肩甲上神経ブロックを計5回行い、原則その間は安静を守ること(ゴルフは我慢ですよ)とした。その結果、5週間後には「夜間の痛みがなくなり」、その後「スコアが徐々に持ち直した」とのことである。

 

インピンジメント症候群…腕を上げると90度前後で痛み
 インピンジメントとは、「衝突」あるいは「まくれ込む」ことを意味し、腱板などが他の部位と繰り返し摩擦、衝突することで発生する。したがって、その原因は肩の使い過ぎである。腕を前方に上げると90度前後で強い痛みが起こり、夜間の寝返りの際にも痛みを自覚する。進行すると腱板断裂を引き起こす。

 

 ペインクリニックでは、腱板断裂と同様の治療により対処している。

 その他に肩関節の周囲に痛みを生じるものとしては、腱板炎、それに続いて起こる肩峰下滑液包炎の頻度も高い。腱板のなかに石灰(カルシウム)が沈着する石灰沈着性腱板炎では、灼けるような激痛を引き起こす。

 

上腕に力こぶを作る上腕二頭筋の「上腕二頭筋長頭腱 腱(けん)鞘(しょう) 炎」では、肩関節に加えて上腕から前腕まで広がる痛みを生じるので厄介だ。また、首の骨(頸椎)に異常がある場合にも肩から上肢に、心臓や 胆嚢(たんのう) の疾患でも時に肩に痛みを生じることがあるので、注意が必要だ。

blog.washizugo.com

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