健康にも影響を与えるといわれ、注目を集める「自律神経」の働き
春先は1年のうちでもとくに寒暖差が大きい時期。数日の間の大きな寒暖差は疲れや冷えとして、意外と身体に影響を及ぼす。
そんな体調不良に深く関与しているのが自律神経だ。心身が興奮してアクティブな状態のときは「交感神経」がアクセルの働きをする。
一方、リラックスしている時や睡眠時にブレーキの役目を果たすのは「副交感神経」。理想はこの二つがともによく働いている状態だが、それを保つことは、ストレスの多い現代人には簡単なことではない。
というわけで近年は健康にも影響を与えるといわれ、注目を集める「自律神経」の働き。今回は「ウェルラボ」が公開した、自律神経研究の第一人者・小林弘幸教授の監修による自律神経についてのレポートを紹介しよう。
■自律神経とは何か
そもそも、自律神経はどんな働きをしていて、「自律神経が整っている」とはどういう状態なのだろうか。
運動神経などとは違って自分の意思でコントロールできず、自律して機能することから「自律神経」と名付けられた。
そのおもな役割は、生命活動を支えること。
具体的には、主に次のような働きがある。
・心臓の動きを調整する
・胃腸の働きをコントロールする・発汗を促して体温を調整する
・血管を広げたり、収縮させたりして血圧や体温を調整する
■自律神経には交感神経と副交感神経がある
自律神経には、身体や頭がアクティブに働くときに優位になる「交感神経」と、身体や心がリラックスしているときや睡眠中に優位になる「副交感神経」がある。
自動車にたとえるなら、興奮や活動を促す交感神経はアクセル、リラックスや安定を促す副交感神経はブレーキの役目を担う。
交感神経と副交感神経の働きを1日の流れで考えてみると、朝、目覚めてから日中に活動しているときは、交感神経が優位な“アクティブモード”に。
夕方ごろからは徐々に副交感神経が優位な“リラックスモード”になる。また、眠っているときは副交感神経が活発に働き、身体を休めながら、翌日にアクティブに働く準備をするのだ。
■自律神経の働きはなぜ乱れるのか?
車と同様、人間もアクセルとブレーキがよく働いているのが理想の状態だ。しかし、その機能はストレスや加齢によって低下することがあるという。
・ストレスと交感神経
ストレスが加わると、身体や頭はそれに対抗しようと、交感神経が優位なアクティブモードを加速させる。
ストレスが強かったり、アクティブモードが長続きしたりすると、交感神経の働きが過剰になってしまう。
すると、夜になっても副交感神経が優位になりきれず、疲れがとれない、手足が冷えたり筋肉がこる、胃腸の働きが悪くなるなどの影響があらわれるのだ。
・加齢と副交感神経
加齢も自律神経の働きを乱す要因のひとつとされる。
とくに副交感神経の働きは、男女ともに、30代以降からガクッと低下していく。
現代人にとって、過剰になりがちな交感神経の働きを抑え、副交感神経を優位に導くことが、「自律神経の機能を高める」ことにつながるといえるだろう。
■「自律神経の働き方」には4つのタイプがある
自律神経をうまく働かせるには、「交感神経/副交感神経の切り替えがうまくいく」ことに加えて、「交感神経/副交感神経の両方ともパワフルであること」が条件となる。
この観点から、小林先生は自律神経の働き方を4つのタイプに分け、それぞれについて自律神経のバランスをさらによくするポイントを紹介している。
A:交感神経◎/副交感神経◎ 絶好調タイプ
日中は適度な緊張感をもちつつ、夜はリラックスして休息できる理想的なタイプ。
仕事でもプライベートでも自分の能力をいかんなく発揮できている。ただし、仕事や環境などの変化によってストレスを感じたり、疲れが蓄積したりすると、「B:がんばりすぎタイプ」や「C:ねむだるタイプ」になってしまう可能性も。
毎日のケアで、このまま好調な状態をキープしよう。
B:交感神経◎/副交感神経△ がんばりすぎタイプ
常にアクセル全開で仕事や家事をテキパキとこなすタイプ。
緊張状態が続き、がんばりすぎてしまうため、心身の疲れに気付きにくいのが特徴。
リラックスモードに切り替えることが苦手で、休息が足りない。
そのため、いつのまにか疲れが蓄積している、いつも手足が冷えている、寝つきが悪いといったプチ不調に悩まされることも……。
C:副交感神経◎/交感神経△ ねむだるタイプ
おだやかなタイプ。
イライラすることがない反面、やる気スイッチがなかなかオンにならず、眠気やだるさに悩まされるのがこのタイプの特徴。このタイプの人に必要なのは“メリハリ”といえるだろう。
D:交感神経△/副交感神経△ ぐったりタイプ
心身がパワーダウンした状態。
心身の疲労が蓄積しているにも関わらず、本人はその自覚がないことも。何をするにもだるい、疲れているのに寝つけない、寝ても疲れがとれない、1年を通して冷えを感じやすいなどの不調がある人は、今すぐ対策を。
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■どのタイプにも効果的!自律神経の機能を高める「首温活」とは?
冷えや疲れを感じやすい現代人が、自律神経の機能を高めるのに効果的なのは首温めだ。
太い血管がある首を温めると全身の血液が温まりやすくなり、冷えや疲れもやわらぐ。
また、首を温めると副交感神経の機能も高まる。
その結果、リラックスできるようになったり、血流がよくなったりすることでこりもほぐれ、全身の疲労感が解消されやすくなるのだ。
■副交感神経の機能を高める方法
●温熱シートやホットタオルで目もとや首もとを温める
ホットタオルや温熱シートを使って、目もとや首もとを心地よく温めよう。昼間、疲れを感じたときや、夜寝る30分前がおすすめ。
●ぬるめのお風呂でリラックス
38〜40℃のぬるめのお風呂に首まで5分間つかろう。
さらに余裕があれば、半身浴を10分間プラス。
炭酸入浴を継続すると、自律神経の機能が高まるという研究結果も。
■交感神経の機能を高める方法
●起床後1杯の水を飲む
水を飲むことで胃腸の神経が適度に刺激され、朝食の消化吸収がよくなり、腸の働きが活性化。自律神経のバランスを整える効果もある。
●適度な運動
自律神経の機能を高めるには、適度な運動が効果的。
身体を動かすことで血流もよくなり、自律神経の機能が高まる。エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使うなど、まずは日常生活の中でできる運動に取り組もう。